【社長、「おいしい」と出会う。】東京の物産展で、大分の吉良酒造と出会う。

社長、「おいしい」と出会う。社長、物産展で吉良酒造と出会う。
地酒屋としての社長のポリシーは、「酒蔵とつきあうのは結婚と同じ」。
この酒蔵と一生添い遂げる、そんな思いで巡り会った全国各地の酒蔵さんと、社長の馴れ初め話を綴ります。

vol.001

社長、
熊本の物産展で、
大分の吉良酒造と出会う。


 吉良酒造と松蔵屋の出会いは、2017年まで遡る。

 「食・食料の展示会」を見に東京ビックサイトへ来ていた社長が立ち寄った、 別会場で催されていた 「熊本物産展」。熊本県の名産品や地物を使ったお土産、工芸品などが並び、多くの人々で賑わっている。東京へ来て一日歩いたけれど、おいしいお酒に出会えないどころか何も収穫なかったし、せっかくだから寄っていくか、と、社長もぶらついてみることに。

 が、歩けど歩けど、こちらでも社長の目ぼしいものは特に見つからない。
 ブースを覗くたびにどんどん渡される試食品や無料配布のサンプル品で手がふさがっていくばかりで、これといって響くものは何もなかった。

 まあ、目的はこれじゃないし、ついでで寄ってみた程度だから…と思いつつも少し肩を落としながら帰ろうとした矢先、賑わう物産展の反対側で小さく展示している一つのブースが目に入った。よく見ると、日本酒の茶瓶が並んでいる。
 あちこち歩き回って疲れていたが、酒屋の血が騒ぎ、気が付くと足が向いていた。

 それが、吉良酒造との出会いだった。


 ブースに立っていたのは、6代目当主・吉良文史郎さん。柔らかい物腰と笑顔が印象的な二人と話すうち、「ゆすらもも」を薦められた。

 ささっと軽やかな筆運びで書かれたラベル。“もも”の二文字を見て果実酒かと思ったが、聞くとれっきとした日本酒なのだという。改めてラベルに目をやると、本当だ、銘柄の上に「純米酒」と書いてある。

 トクトクトク、とお猪口に注いでもらい、くいっと飲む。

 瞬間、社長の目は飛び出そうになった。なんだこれ、本当に日本酒なのか?この甘酸っぱさは何だ?白ワイン?いや、ラベルには純米酒と書いてあったよな…

 ひとしきり混乱し、感嘆の声を漏らし続け、ようやく落ち着いたところでやっと訊ねる。


 「これ、どうやって造ってるんですか?」

 空のお猪口を片手に目を真ん丸にしながら訊ねる社長を見て、文紀さんはふふっ、と笑いながら一言。

「企業秘密です」

 加えて、今まで吉良酒造の代表商品として売り出していた『一の瀧』という銘柄名を一新することを考えている、という話も聞いた。タイミングとしても良いし、何より丁寧な造りや蔵元の人柄、そして『ゆすらもも』の前代未聞の衝撃的な美味しさ、これらを逃す手はない!ということで、二つ返事で松蔵屋の取り扱い商品として新しく迎え入れることに。日を改めて蔵を訪問することを約束し、物産展を後にした。


 後日、豊後大野市・緒方町へ飛んだ社長。

 今までありとあらゆる日本酒を飲んできたつもりではあったけれど、その全てをひっくり返されるような未知の味に、すっかり虜になった、と伝え、さらに踏み込んで話を聞いていくと、蔵や生産量の規模の小ささ、それだからこそ成せる酒造りへの真摯で実直な姿が、次から次へと見えてくる。

 そこでまたさらに吉良酒造に惚れ込んでいくことになるのだが、その話は、また次の機会に。

このはなしをした人

社長

松蔵屋を切り盛りする、我らがボス。
何に対しても恐れず取り組む姿は、まさに「イケイケドンドン」。
唯一苦手なものはハチ。

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このはなしを書いた人

Juuuuun

デザイナー・ライター
食べることを日々の幸せとしつつ、糖質と毎日睨み合うダイエッター。
最近はおからパウダーに夢中です。